精神科訪問看護へようこそ

 

 

病棟から精神科訪問看護に飛び込んだこころさんが、看護大学で働くカワウソ先生との対話を通して在宅の精神科看護を学び、成長していく物語です。

 

川下 貴士 ●かわしも たかし

松蔭大学看護学部看護学科精神看護学 助教

 

小野坂 益成 ●おのざか ますなり

松蔭大学看護学部看護学科精神看護学 講師

 


 

第14回 近いからこそ必要な客観性

 

前回のあらすじ

こころさんはカワウソ先生に、精神科訪問看護の道に入ったいきさつや、現場での経験で忘れられないエピソードを聞きました。先生の話から、精神科訪問看護で重要な視点を得ることができました。

 

 

こころ カピバラ先生、お久しぶりです!

 

カピバラ ああ、こころさん、久しぶり! カワウソ先生はいないよ。

 

こころ そうなんですね。でも、今日はカピバラ先生に会いに来たので、大丈夫です!

 

カピバラ えっ……いつもカワウソ先生に相談されているので、びっくり。どうかしたの?

 

こころ はい。少し前にカワウソ先生に最近の出来事を話す機会があったんですけど、カピバラ先生にも話したいことがあって、来ちゃいました!

 

カピバラ そういうことか。こころさんも精神科訪問看護を始めてから2年目になったしね。もう慣れたかな?

 

こころ はい、最近は順調です! 利用者さんともだいぶ信頼関係を築けるようになってきたと思います。ただ、かかわる期間が長くなるにつれて、私が感情移入をするようになって……、「これでいいのかな」とも思うんです……。

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市民とともに歩むナースたち(10)

「People-Centered Care(PCC)」とは、市民が主体となり保健医療専門職とパートナーを組み、個人や地域社会における健康課題の改善に取り組むことです。本連載では聖路加国際大学のPCC 事業の中で経験した「個人や地域社会における健康課題の改善」を紹介します。

 

射場 典子 いば のりこ

聖路加国際大学

PCC開発・地域連携センター

看護情報学 准教授

 


「つながる暮らしの談話室:佃の渡しサロン」

地域の高齢者が自分らしく生きる力を育むナラティブ・コミュニティ

 

「るかなび」で蒔かれた種

「佃の渡しサロン」(以下:サロン)は、本連載第1回・第2回(2025年1・2月号)で紹介した「聖路加健康ナビスポット:るかなび」で活動していた7名のメンバー(市民ボランティア、看護師・保健師、歯科衛生士、司書)が中心となって立ち上げた地域サロンです。同じ中央区内ではありますが、大学の外で活動しています。

 

「るかなび」が始まったとき、一緒に活動して
いた市民は地元の人ばかりではありませんでした。ボランティアとして活動するために、遠方から通われる人も多かったようです。私たちは、そういった人たちが、一緒に活動する中で主体的に健康生活を築いていくためのヘルスリテラシーを身につけ、自分たちの持ち味を生かしてピープルセンタードケア(以下:PCC)の担い手として、いつか地元や新たな場へと巣立ち、PCCが広がっていってほしいと願っていたのです。それが実現したのはPCCが提唱され、「るかなび」が始まってから約10年後の2015年のことでした。

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能登半島の災害から学ぶべきこと(企画協力:酒井明子)

 

第4回

能登半島地震の災害関連死①

 

上田 耕蔵◉1975 年神戸大学医学部卒業後、神戸医療生活協同組合神戸協同病院に就職。1993 年より現職。1995 年の阪神・淡路大震災において災害関連死という概念を提唱した。

 


 

災害関連死は災害ごとに違う様相を見せます。能登半島地震の特徴は、①後期高齢者比率増:福祉施設支援の課題、②地理的問題:自衛隊空白地、③医療職員不足:災害拠点病院の機能低下です。さらにマスコミの災害関連死の捉え方に問題を感じました。概念の見直しも必要と思われます。

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【SPECIAL BOOK GUIDE】令和7年版看護白書 災害時におけるこれからの看護

 


自然災害や新興感染症の発生に際し、看護は何をなすべきか

災害支援ナースや医療・保健・福祉活動チーム、

関係団体等の活動事例を交え、具体的に解説!


看護界における〈最新・最重要のデータと情報〉を集約して発信する『看護白書』。令和7年版では、医療法・感染症法改正に伴い、2024年4月より「災害・感染症医療業務従事者」として法制度等に基づく新たな仕組みとなった「災害支援ナース」について解説するとともに、同年に能登地方で発生した災害に対する支援活動を、災害支援ナースや関係機関等の看護職ら自身が振り返り、整理します。

 

法令等に基づく新たな仕組みとなった

災害支援ナース

 

1995年1月発生の阪神・淡路大震災において、兵庫県看護協会と兵庫県立看護大学(現・兵庫県立大学)が連携し、看護ボランティアの派遣調整を行ったことが、「災害支援ナース」誕生のきっかけとなりました。

 

以降、2011年3月発生の東日本大震災や2016年4月発生の熊本地震、2024年1月発生の能登半島地震などの災害時において、多くの災害支援ナースが被災地等に派遣され、救護・支援に尽力してきました。

 

しかし、災害支援ナースはボランティアであり、被災地等への派遣に当たっては、勤務先の医療機関等で休暇を取得して活動することが多く、事故補償のあり方や活動対価などの課題が存在しました。

 

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看護と経営(18)

 

●監修 福井 トシ子

国際医療福祉大学大学院副大学院長/教授

●企画協力

鳥海 和輝

『Gem Med』編集主幹

小野田 舞

一般社団法人看護系学会等社会保険連合 事務局長

 

診療報酬等に関連する用語の理解や管理指標の持つ意味、病院機能ごとの経営の考え方について解説するとともに、事例を通じて、看護管理者が病院経営に貢献するためのヒントを探ります。

*vol.1〜6は【解説編】、vol.7以降は【実践編】となります。

 


 

vol.18 実践編⑫

在院日数短縮・入退院支援加算の算定率向上・ 新規患者獲得をめざす

 

鳥海 和輝

とりうみ・かずき◉大学卒業後、社会保障系出版社に勤務。医療保

険専門誌、介護保険専門誌の記者やデスク等を経て現職。現在、

ニュースサイト『Gem Med』にて、医療政策・行政情報を発信し

ている。

 

 

急性期病院の入院が

「要介護度悪化」につながることも

 

前号で、DPC病院では、入院患者を期間Ⅱまでに退院させることが病院経営にとっても、患者のADL・QOLなどの点からも非常に重要であること、さらに期間Ⅱまでの退院に向けて、後方病院や介護施設などとの連携を進める必要があることを確認しました。今回は、このうちの「急性期病院から回復期病院などへの早期転院」に焦点を当てて、その重要性を考えてみます。

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